[読書] 超人の秘密:エクストリームスポーツとフロー体験

スポーツをやっていて良かったことの一つに、フロー(ゾーン)の経験があります。フローとは、極度の集中と落ちつきが同時に起こった状態であり、最高のパフォーマンスの発揮には欠かせない状態です。こうしたものは、スポーツ選手のインタビューなどでよく聞くため、トップレベルの人間のみに許された境地に思われます。けれども、決してそうではなく、趣味レベルのプログラミング中でも入ることはあります。

会話が弾んで、いつのまにか夕方になっていたり、仕事のプロジェクトに夢中になるあまり、ほかの一切を忘れてしまったりしたことがあれば、フローを経験したことになる。

フローやゾーンと名前がつくことで、特別であったり、神秘的であったり、どこか怪しさまで感じるかもしれませんが、それは誤解です。熱中・夢中・没入などと言い換えれば、思い当たる経験を持つ人は多いと思われます。超人の秘密:エクストリームスポーツとフロー体験では、フロー中に脳内で起こること、また、フローに入るための条件が書かれています。

もし、継続的にフローに入ることが可能であれば、パフォーマンスは飛躍的に向上し、成長は何倍にだって速くなるでしょう。でも、それは誰もが知っていることで、好きこそ物の上手なれとか、夢中になれるモノがいつか君をすげぇ奴にするんだなどと、意味することは同じです。

また、フロー自体に興味が無かったとしても、何かに夢中になれる時間が幸せなのは確かだと思いますし、そのヒントとして超人の秘密はとても役に立ちます。

世界一幸せな人、つまり自分の人生に最も多くの意味を見出している人は、フロー体験を最も多く経験している。

フロー体験中、脳内で何が起こっているのか?

フローに入ると、身体と頭が最高のパフォーマンスを発揮します。特に直感が冴え渡り、確信めいた「ひらめき」がうまれやすくなります。このとき、脳内では意外なことが起きているようです。

試合中のチェスマスターの脳を調べた。すると、高次認知機能の大半をつかさどる、前頭前皮質という部位の活動が大幅に低下していることがわかった。これは不思議な気がするだろう。チェスは論理的思考と計画策的、戦略のゲームであり、この三つの要素には、高次的認知機能が欠かせないように思える。しかし、脳の意思決定の方法はこのほかにもあるのだ。

「意識的」と「無意識」、あるいは「左脳」と「右脳」

戦略や計画を立てるとき、思考は言葉で展開された論理的なものであり、はっきりと認識することができます。この時の脳派はベータ派です。それに対して、直感やひらめきは、なぜ思いついたのかをうまく認識できません。ひらめきの脳波はガンマ派です。

ひらめきまでの脳波の順を追うと次のようになります。新しい刺激の処理にシータ派、分析にベータ派、行動にアルファ派、独創的なひらめきにガンマ波が生成されます。ただし、ひらめきに必要なガンマ派の急激な増加は、低アルファ派/高シータ派の中でしか生じません。

初心者と熟練者

初心チェスプレーヤーは、基盤の状況を分析することに一杯であり、ベータ派に長く留まります。それに対して、熟練チェスプレーヤーは、基盤のパターンや指し手の流れを自分のものとしているので、分析のたびに意識して頭を使いません。さらに、いったん分析に確信を持つと、独創的ひらめき(ガンマ波)を生み出せる唯一の状態である低アルファ波/高シータ波(集中状態)に移行し、そこから動きません。フローとはこのサイクルを流れるように移動することを言います。

行動とリスク

フローでひらめいたアイデアも実際に行動に移さなければ意味がありません。スポーツでは失敗で非難される心理的リスクは当然ながら、肉体的リスク(恐怖)をも乗り越えなければなりません。このときの脳内でもまた面白いことが起きています。

フローに入ると背外側前頭前皮質が非活性化する。この部分は、自己監視や衝動制御をつかさどる領域。それが抑えられると、創造性はさらに自由に流動するようになり、リスクを負うことは恐ろしくなくなる。疑問を持つことなく、直感に従えるようになる。

フロー中、脳は協力な痛み止めを大量に放出するので、身体の損傷に鈍感になり、自らの最大筋力を絶対筋力に近づけることができる。

通常、人間が使える最大筋力は絶対筋力の65%でしかありません。これは、肉体を守るために脳が設けたリミッターです。ところが、フローに入るとリミッターが外れ、最大筋力が絶対筋力に近づきます。火事場の馬鹿力の正体は脳にあったようです。

脳から消えるもの

脳から消え去るのは不安や限界だけではありません。

フロー中は、時間が普通とは異なる速さで進む。ほとんどの人は時間が通常よりはるかに短く感じられると答えている。しかし時々逆のことがおきる。これは、大脳新皮質の大部分が不活動になるので、時間を計算する能力が失われるため。

フロー中は、上頭頂小葉の働きが弱まる。この部分は方向や定位置を認識する部分で、ここが弱まることにより、自己と世界の境界線を区別できなくなる。

フローに入ると、自己認識、時間感覚、空間感覚の三つが同時に消滅します。本書によれば、それは「死への恐怖心が消える」ことを意味します。恐れは消え去り、なんだってできる「気」になります。ただ、あくまで「気」であって、実際に危険な行為で命を落とす人についても本書では触れています。というよりも、危険なスポーツがフローを起こし易いのはなぜなのかを探るのが本書の目的でもあります。

フローに入るために

フローに必要な高い集中力を生み出すにはコツがあります。「明確な目標」「直接的かつ即時のフィードバッグ」「挑戦とスキルのバランス」の三つです。

明確な目標

目標に対しての期待やルールが明確であること。大事なのは「目標」よりも「明確」の部分です。目標の立案や達成のために、未来の自分をイメージし続けることは、絶えず今ここから集中を逸らすことを意味し、モチベーションを上げはしても、フローに入るには邪魔となります。目標までの作業を簡単にできる単位に分け、すべき行動を明確にすることで、自己意識の出番はなくなり、集中力は上がります。

直接的かつ即時のフィードバッグ

この瞬間の自分の行為が、成功か失敗かをすぐに分かるようにします。そうすれば、次に取るべき行為が明確になり、それのみに集中することができます。この部分は自分の環境に合わせて工夫が必要な部分です。プログラミングは恵まれていて、すぐにエラーとして教えてくれます。

挑戦とスキルのバランス

集中力が最も高まるのは、作業の難しさと、その作業のためのスキルが、特定のバランスにある場合です。挑戦が難しすぎたり簡単過ぎたりすると、不安や退屈に集中力が奪われてしまいます。自分のスキルを4%上回るぐらいの挑戦がちょうど良いようです。

まとめ

脳の可塑性により、フロー中の脳の変化の影響はその後も続いていきます。フローに入った翌日は、ひらめきが生まれやすくなります。そして、それが次の行動へのモチベーションとなります。

フローには行動(挑戦)が不可欠であり、課題克服、スキル向上、成長に繋がる。それは現状からの前向きな逃避である。

フローという概念を持ち出すまでもなく、何かに一生懸命な人、何かを夢中でしている人は、とても魅力的です。

ライブコンサートだとか、従来型のスポーツイベントを見る場合、私たちは基本的に、フロー状態にある人を見ることにお金を払っていることになります。

CONTENTS
  1. フロー体験中、脳内で何が起こっているのか?
    1. 初心者と熟練者
    2. 行動とリスク
    3. 脳から消えるもの
  2. フローに入るために
    1. 明確な目標
    2. 直接的かつ即時のフィードバッグ
    3. 挑戦とスキルのバランス
  3. まとめ